JMIUの主張と見解
中央本部の政策的提言
「産業空洞化に立ち向かうための私たちの提言論集」からの抜粋
『産業空洞化に立ち向かうための提言論集』発刊にあたって
生熊委員長論文『産業空洞化に立ち向かう私たちの提言」
「改悪された労働基準法、労働者派遣法のもとで
どうたたかいを強めるか」
「会社更生法改正要綱に対する意見」
「企業組織再編・研究委員会報告に対する意見」
「産業空洞化問題緊急提言」
産業空洞化に立ち向かうための第1次緊急提言発表にあたって
産業空洞化に立ち向かうための第1次緊急提言
「03春闘統一要求書」
「イラク・労働法制職場決議」
「有事法制阻止、労働法制改悪を許さない」五・二一中央行動・総決起集会
「労働基準法の一部を改定する法律」及び「職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件整備等に関する法律の一部を改正する法律」に関する要請書
有事関連法案の廃案を求める要請書
職場と社会で「働くルール」を確立し、不安定雇用の組織化をすすめよう
改悪された労働基準法、労働者派遣法のもとでどうたたかいを強めるか
2003年7月29日 JMIU第1回中央執行委員会
1、労働法制改悪反対闘争の到達点と成果の討論・学習を
1)6月27日、労働基準法改悪案が成立しました。労働者のくらし、雇用と権利を奪う労働基準法・労働者派遣法改悪を阻止するために、JMIUは全労連とともに全力をあげてたたかってきました。このたたかいの到達点と成果について、きちんと討論と学習をおこない、教訓をつかみ、今後のたたかいの発展に役立てることが重要になっています。
2)JMIUは、5月21日には労働法制改悪阻止のストライキを決行しました。約70支部分会が、時限ストライキ、指名ストライキを決行し、職場集会が百数十支部でおこなわれるなど、全国で悪法阻止のたたかいを展開しました。私たちはこのとりくみのなかで、大胆な方針提起と職場の努力が結びついたとき、運動の大きな飛躍が起きることをつかみました。一部の役員の討議だけで「無理」と決めつけるのでなく、産業別組織としての職場オルグを強化し、その訴えをもとに職場で討論することの重要性をつかみました。こういうなかで、すばらしい創意性が発揮されました。ストライキをうてないところでも、JMIU中央行動に参加者を増やす、昼休み集会だけでなく、地域に宣伝に出る、さらに夜の総決起集会に多くの仲間が参加するなどのとりくみが強化されました。ストライキを提起したからこそ、真剣な討議がされ、大きな行動として成功したのです。これは4月段階から国会議員要請を大々的に展開するなど、職場からたたかう態勢を強化してきたが力になっていました。私たちのたたかいが、法案の修正をかちとるなど、大きく情勢を変えさせたのです。これは、必ず職場に悪法をいれさせない力になります。
3)今回のたたかいの特徴のひとつは、労働基準法改悪が成立した直後から、「改悪されたもとで、どうたたかったらいいのか」という問い合わせが続き、また学習会をするという動きが強まったことです。職場や地域の仲間は、「悪法が通ってしまった」と意気消沈しているのではなく、「どうたたかうか」というとりくみに、早くも立ち上がっているのです。それは、今回の改悪が「やられっぱなし」でなく、労働者・労働組合が反撃し、改悪法案の重要部分の修正をかちとるなど、新たな到達点を築いたからといえます。
この到達点と成果をみんなでつかみ、労働者のくらし、雇用と権利をまもるために、職場から大きな討論をすすめます。
2、労働基準法改悪の「解雇できる」の削除をかちとった
1)労働基準法改悪のポイントの第1は、「使用者は、…労働者を解雇することができる」という文言が労基法条文に明記されることでした。国会審議の政府答弁では、「この条文は最高裁判例を法文化したもの」というごまかしの連発でした。しかし、厚生労働省のホームページの「労基法改正の概要」には、堂々と「原則として解雇できるように変わります」と明記していたのです。「解雇ルール」がもちだされたのは、小泉内閣の「規制緩和」のなかの「解雇要件緩和」として提起されたものであり、そのねらいは明白でした。
2)これに対して、「労働者保護法である労働基準法を変質させる」という批判がまき起こり、全労連や連合など労働組合の一致した反対闘争、自由法曹団や日弁連など法律家の大きな反対行動が展開されました。そのたたかいが「野党共闘」に反映し、衆議院段階で「解雇できる」を削除し、「解雇は、客観的かつ合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、…無効とする」と修正されたのです。また衆参両院附帯決議で、「(解雇について)使用者側に主張立証責任を負わせている」裁判の現状を変えないことを強調し、参議院附帯決議では「整理解雇四要件に関するものを含む裁判例の内容の周知を図ること」も政府に求めました。
かんたんにいえば、「整理解雇四要件など、正当な理由のない解雇はしてはいけない」と労基法で決めたといってもいいのです。これは、労基法のなかで初めての「一般的な解雇についての規制」であり、画期的なものといえます。
3、改悪された部分の危険性を直視しよう
1)今回の労働法制改悪のなかで、@有期雇用の上限延長、A派遣労働期間の上限延長、製造現場への導入解禁、B裁量労働の要件緩和などは成立しました。これは、労働者の雇用と権利への攻撃の条件がいっそう整えられたことになり、その危険性は、ありのままに見なくてはなりません。ここが、たたかいの土台です。
2)労基法改悪で「解雇自由」のもう一つのポイントが、「有期雇用の上限延長」、とくに1年限りの有期雇用を3年に延長する改悪でした。3年契約労働となれば、1年限りの臨時雇用とは性格が一変することは明らかです。新入社員は、すべて3年契約から出発させるなど、これまでの1年限りの臨時雇用ではできなかった仕事をさせ、3年後に契約更新するか否かは、経営者の思いのままになるのです。「正規雇用」労働者から有期雇用労働者への劇的な置き換えが起こる危険があります。
3)さらに労働者派遣法でも、1年から3年へ派遣期間の上限延長がおこなわれました。製造現場への派遣労働解禁もされました。「有期雇用」と合わせて考えれば、「正規雇用」から不安定雇用労働者への置き換えが大量にすすみ、その悪影響ははかりしれないほど深刻になります。すでに、新卒者の就職先として「派遣会社」が手を伸ばしています。技能・技術・経験のない労働者が、最初から派遣労働者になるのです。派遣労働が、一定の専門性や臨時性のためでなく通常の雇用形態になり、まさに「人貸し」業になります。
すでに違法派遣がおこなわれている職場では、コスト削減で企業の利益は上がっていますが、「正規労働者」には長時間過密労働が強いられ、また、「どうせ他の職場にいくのだから」と仕事は教えない、品質低下、クレームなどが続出する事態が生まれています。
4)また、「裁量労働の要件緩和」は、一切の修正のないまま通過しました。このままでは「ただ働き」のいっそうの広がりをもたらすことになります。
5)これでは、日本の人口の大多数を占める労働者とその家族の生活と雇用は悪化し、日本社会の将来に暗い陰をおとします。「消費不況」は、回復の目処が立たない状況が続きます。労働者の雇用不安、生活不安、将来不安がいっそう高まることになるのですから、それは当然です。しかし、それにとどまらない、大きな社会問題が起こります。不安定雇用労働者が増え、大多数の労働者の所得が低下すれば、保険料納付を前提としている年金・健康保険などの「社会保障」システムの崩壊の危険さえ生まれます。また、少子化が社会問題になっていますが、新規学卒者をふくむ青年層に不安定雇用労働者や失業者が増大すれば、「結婚できない」「子どもを育てられない」ということになり、「少子化」は、いっそう進行することも明らかです。労働者とその家族のくらしと雇用の悪化は社会問題です。
4、「改悪労働法制」のもとでのたたかいのポイント
「改悪労働法制」が成立したもとでのたたかいのポイントは、@「団結による働くルール」をつくるために「改悪労基法・労働者派遣法」を職場に適用させないたたかい、A厚生労働省に対する指針策定要求、国会附帯決議の具体化をはじめ、社会的な「働くルール」を前進させるたたかい、B増大する不安定雇用労働者の組織化に本気でとりくむこと、この3点が重点です。
(1)職場でのたたかい
1)職場のたたかいでは、すでに述べた「解雇規制」など到達点に確信をもって、「整理解雇四要件など正当な理由のない解雇はできない」、「経営者の一方的な不安定雇用の導入は許さない」という職場世論をつくることを追求します。これをたたかいの土台にします。
2)2003年秋闘方針にもとづき、「事前協議・同意協定」の締結を求めるたたかいを前進させます。とりわけ、今回の法改悪に対応した「解雇、雇い止め」、および「有期雇用・派遣など不安定雇用労働者の導入」に関する事前協議・同意協定を求めるたたかいが重要です。さらに「裁量労働」導入についても「事前協議・同意協定」の締結を求めます。「企画業務型裁量労働」の適用要件としては、労基法で「本人同意」がひき続き必要です。
衆参両院の附帯決議では、@「有期雇用の上限延長にあたっては、常用雇用の代替を加速化させないように配慮するとともに、有期雇用の無限定な拡大につながらないよう十分な配慮を行うこと」、A「1年を超え3年以内の期間連続して労働者派遣の役務の提供を受けようとする場合には、派遣先において労働者の過半数で組織する労働組合等からの意見聴取が確実に行われ、意見が尊重されるよう派遣先に対する指導に努めること」、B「今回の裁量労働制の適用事業場の拡大、手続き緩和が、サービス残業隠しに悪用されることのないよう、適用事業場についての基準を設けるとともに、対象業務については当該事業場全体の運営に影響を及ぼすものとすること」などを、厚生労働省の行政指導として求めています。
3)労使交渉のなかで、これらの「附帯決議」なども活用し、これらに沿った協定を結べば、労働者の雇用と権利をまもる重要な力となります。JMIUの統一要求を重視します。その他、国会答弁など、活用できるものを生かして「職場の働くルール」を確立するたたかいを強化します。
(2)社会的な「働くルール」を確立するたたかい
1)すでに述べた国会附帯決議を活用する労働行政への要求、派遣に関するさまざまな指針などは、全労連とともに要求を具体化し、たたかいを広げます。「有期雇用労働者」の均等待遇、育児休業の適用、裁量労働の労働時間把握義務などの課題にとりくみます。
2)「解雇についての金銭解決」や「ホワイトカラーの労働時間制限撤廃」などが、再び浮上する動きです。「正当な理由のない解雇は無効」が法的にも確立されたのですから、逆に就労の権利を保障させるなど、「働くルール」を前進させるたたかいにとりくみます。
3)「企業再編」のもとで雇用と権利をまもる労働者保護法の制定、ただ働き根絶、パートなど有期雇用労働者の均等待遇など、社会的な「働くルール」を確立するたたかいを強化します。
(3)不安定雇用の組織化に本格的にとりくむ
1)今回の法改悪は、いっそう有期雇用、派遣労働など、不安定雇用労働者を増大させます。不安定雇用労働者の組織化に本格的にとりくみ、労働者の団結の力で職場と社会に「働くルール」を確立し、悪法を骨抜きにすることが重要です。「労働のルール破壊」に対しては、労働者の団結権の拡大、労働組合の組織化で反撃することが決定的に大切です。
2)不安定雇用労働者の組織化では、まず何よりもパート労働者、嘱託、臨時など、身近な仲間の組織に本格的にうってでることが重要です。これは、どこの職場でもすぐにとりくめる課題です。あらためて職場で討議を深め、組織化をはかります。
3)有期雇用労働者や派遣労働者の組織化について、挑戦をしていきます。労働者との対話のなかから、要求をつかむことから始めます。派遣の仲間たちとの対話にとりくみ、討論のなかから解決方法をみつけだし、派遣の仲間の団結のあり方については「JMIU派遣ネット」のような横断的組織もふくめて検討します。
4)これらにとりくむうえでは、すでに運用を開始したJMIUホームページの活用、改善も重要です。組合員のみなさんの意見や提案を積極的に寄せてください。 以上
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2002年10月25日
厚生労働大臣 坂口 力 殿
全日本金属情報機器労働組合(略称:JMIU)
東京都北区滝野川3−3−1ユニオンコーポ3F
03-5961-5601,fax03-5961-5603
代表者 中央執行委員長 生熊 茂実
「企業組織再編に伴う労働関係上の諸問題に関する研究会報告」に対する意見
1、厚生労働省は、本年8月22日、「企業組織再編に伴う労働関係上の諸問題に関する研究会報告」(以下、たんに「研究会報告」と略す)を発表した。
「研究会報告」は、「営業譲渡の際の労働契約関係の承継について、法的措置を講ずることは適当でない」とし、たんに「企業組織再編に当たって、企業が講ずるべき措置、配慮すべき事項等に関する指針を策定し、その周知を図ることが必要である」旨を提言した。厚生労働省は、この報告を受け、「指針」策定にむけた検討を行うとしている。しかしながら、昨今、わたしたちの働く職場では、営業譲渡など企業組織再編が激増しており、それに伴い、組合員・労働者の雇用、労働条件など権利に係り、さまざまな問題が発生している。なかには、労働委員会・裁判などに発展する例もある。
このようななかで、わたしたちは、厚生労働省に対し、営業譲渡等企業組織再編における労働者の権利保護について、法的規制も含め必要な措置をとるよう繰り返し申し入れてきた。そのたびごとに厚生労働省は「研究会での検討にゆだねている」との回答を繰り返してきた。しかし、今回の「研究会報告」はわたしたちの働く現場の実態や要請の内容がまったく反映されておらず、その結論もおおいに問題がある。
したがって、「研究会報告」に対するわたしたちの考え方を示し、あらためて、立法措置を含め、企業組織再編に係る労働者の権利保護強化を図るよう強く申し入れるものである。厚生労働省の今後の検討に十分反映していただきたい。
2、「研究会報告」の具体的な内容について入る前に、「研究会」の運営(調査研究)のすすめかたについて意見を述べる。
わたしたちは、前述の厚生労働省への申入れのなかで、「全国的な実態調査を行なうとともに、全労連・JMIUを含めた幅広い労働組合から意見を聴取する」ことを強調してきた。しかし、厚生労働省は、一度もわたしたちからの意見聴取を行なわず無視し続けてきた。「研究会報告」によると、労働団体としては、日本労働組合総連合会(連合)からヒアリングを行なったようである。このような対応は、全労連、JMIUに対する差別的扱いであり、きわめて不当であるばかりか、それが「研究会報告」の結論にも悪影響を与えている。厚生労働省と研究会に抗議するとともに、あらためて全労連・JMIUからの意見聴取を求めるものである。
3、次に具体的な内容を検討する。「研究会報告」は、5章から構成されている。とくに、W章において「企業組織再編に伴う労働関係上の諸問題」と題して、労働契約の承継の考え方や問題点及び立法措置の要否を含めた対応のあり方に関する検討結果を列記している。「研究会報告」の大きな特徴は、現場のリアルな実態が無視されているため、法律的解釈に偏り、企業が行なっているさまざまな脱法行為、違法行為が無視され、それらを規制し、どう労働者の権利を保護するかという視点を失っていることである。したがって、まず、企業再編をめぐり、現場でどのような労働者の権利侵害が起こっているかについてとりあげる。
(1)突然の発表・秘密主義
多くの場合、企業再編とそれにともなう転籍などの提案が労働組合に明らかにされるのは、「営業譲渡基本契約」が締結され、マスコミ発表される寸前である。なかには、新聞を見て初めて知るというケースすらある。そして、実際に譲渡(転籍)が実行されるまでに2〜3か月の期間しかなく、必要な情報も「インサイダー取引規制に抵触する」などの理由をつけて開示されないことがほとんどである。
このように、形だけは「労使協議」が行なわれていたとしても、労働組合・労働者に選択の余地はなく、実質的に協議が形骸化され、何も知らされないまま、会社方針が一方的に押しつけられているのが実態である。
「研究会報告」の「協議のための時間が短いという指摘はあるものの、大きな問題は生じていないと考えられる」(P31)という現状認識がどこから来ているのか、はなはだ疑問である。
(2)営業譲渡、合併、会社分割など企業組織再編は、多くの場合、その企業を実質的に支配している親会社の経営施策にもとづき、実行される。また、営業譲渡や会社分割を活用して、いわゆる「持株会社」化がすすめられることも増えており、そうした場合、賃金・労働条件は、事実上、親会社である「持ち株会社」が決定する。
このような場合、いくら労働契約上の会社と団体交渉しても、実質的な決定権を持ち合わせていないのであるから意味のある交渉は不可能である。しかし、実際に雇用や労働条件に強い影響力・決定権をもっている親会社に団体交渉を申入れても、直接的な使用者でないという理由で団体交渉を拒否されるケースがほとんである。
(3)転籍先の企業の労働条件・福利厚生、経営計画などが見えないというのも、多くの労働者・労働組合の不満のひとつとなっている。
多くの場合、営業譲渡などは、新しく会社を発足するケースが多く、本来、労働契約が承継される前に明示され、同意するかどうかの判断基準とすべき「就業規則」案すら「これからつくる」と言われ、転籍の直前まで開示されない。また、譲受会社の営業計画、売上予測なども明らかにされないことがほとんどで、結局、「労働条件は現状維持」「大丈夫だから安心して行ってくれ」などという根拠のない経営者の口約束を信じるしかないのが実情である。もちろん、そうした口約束が裏切られるケースもままある。A社では、ある部門をアウトソ−シングと称してB社に営業譲渡した。その際、当該部門の労働者には、「将来の不安はない。安心して転籍してくれ」と説明。それを信じて多くの労働者は転籍したにも係らず、二年後にB社は営業不振を理由にその部門を閉鎖したのである。
(4)譲受会社の経営方針や労働条件、職場環境などについて労働者・労働組合が詳細な情報の提供を受け、また、労働者の要求を実現していくためには、譲受会社との交渉が不可欠である。しかし、譲受会社は、労働契約が承継される前であることを理由に団体交渉を拒否するケースがほとんどである。こうした譲受会社の対応は、労働者の不安をいっそう大きくする。
(5)労働者にとって、労働協約が承継されないのは大きな問題である。この点について、「研究会報告」は、「営業譲渡の法的性格が特定承継であることに鑑みれば、労働協約のみ、特段の取扱いをすることは適当でない」としている。しかし、いうまでもなく、労働者は生身の人間であり、労働協約は、労働者の基本的人権である「生存権」を具体的に守るために労働者の努力によって得てきた財産のようなものでものである。とりわけ、労働協約の中心は、さまざまな事項に係る事前協議・同意約款協定、組合事務所・掲示板の貸与をはじめとする便宜供与などの権利の規定で構成されている。労働協約が失われれば、こうした労働組合活動に係る諸権利はすべて最初から獲得していかなければならず、労働組合の弱体化につながることは必至である。
「研究会報告」の基本的考え方からすると、労働者には拒否権があるのだから、労働協約が承継されないことに不服だったら転籍を拒否すればいいということだろう。
しかし、「条件に不満だったら転籍を拒否すればいい」という考え方に立ち、譲受会社での労働者保護を軽視すると、営業譲渡をはじめとする企業再編は、会社の都合によって突然、実施されるものであることから、圧倒的な労働者は、移籍に不安を感じ、ほとんどの労働者は、転籍を拒否するだろう。このように、かえって、企業再編の障害になりかねないのである。企業組織再編を円滑にすすめるためにも、労働者が不安なく譲受会社に移れる社会的条件をつくることが不可欠である。
(6)転籍の強要
職場で労働者・労働組合が直面する最大の問題は「転籍」についての労働者の同意の取りつけかたである。「研究会報告」では、「労働者には拒否権がある」と一言ですませているが、会社がさまざまな方法で「転籍」についての労働者の「拒否権」を封じこめ、事実上、「転籍」を強制しているのが実情である。その手法を以下に紹介する。
@ 転籍に際し、労働者の同意を得る場合には、ほとんどすべての企業は、上司による「個人面接」が行われる。「個人面接」では、誰も見ていない密室で、上司と部下という上下関係のもと、「いまの会社に残っても仕事がない」など脅迫めいた言葉で繰り返し転籍の同意を迫られる。こうした状況のなかで、自分の意思を明確に表明できる労働者はほとんどいない。
A さらに、そうした会社からの「面接」をくぐりぬけた労働者には次の難関が待ちうけている。「いやがらせ」である。「研究会報告」は「転籍拒否だけでは解雇理由とはならないことを周知徹底すべき」としている。たしかにそれは必要なことではあるが、多くの企業は、転籍拒否だけでは解雇理由とならないことはすでに承知している。だからこそ、違った形で、労働者がみずから退職せざるをえない状況に追いこむのである。そのやり方は、まさに「人権侵害」と言われるほど、陰湿である。たとえば、わたしたちの組合のなかでも、転籍を拒否した組合員を「研修」と称して、仕事を取り上げ、一般の労働者から隔離する。すぐれたスキル、経験をもった組合員をアルバイトでもできるような単純作業(たとえば、郵便物の社内仕分け、封切り、倉庫管理)に従事させるなどのいやがらせを行なった例がある。
しかも、こうした「いやがらせ」は、周りの労働者には「見せしめ」の効果を発揮する。「あのようにはなりたくない」という気持ちが泣く泣く転籍に応じざるをえない状況をつくりだすのである。
こうした人権侵害の「いやがらせ」に対し、わたしたちは、裁判で争った。また、厚生労働省にも繰り返し、事例として訴えた。そうしたなかで、国会質問でも追及された。テレビ、新聞、週刊誌などのマスコミも「隔離部屋」などの言葉とともに取り上げた。なぜ、研究会がこの問題を取り上げないのか不思議で仕方ない。
B 会社が「転籍」と「希望退職」をセットで提案してくることも多い。つまり、労働者に対し、「転籍」か「希望退職」かの二者選択を迫るのである。そして、「転籍を強要しているわけではない」と居直る。まさに「金を出せ。出さぬなら殺すぞ」という強盗の論理である。
(7)転籍者の選定
逆に、労働者が譲受会社への転籍を希望していても拒否されるケースもある。たとえば、50歳以上の高齢者、有期雇用労働者は要らないとされるケースである。組合解散を転籍受け入れの条件とされたケースもあった。
このようなケースの場合、「研究会報告」(P30)で述べているように、客観的な合理性を欠くような理由で、特定の労働者の労働契約承継を対象から排除することは、公序良俗に違反することは当然である。問題なのは、企業への周知徹底によってこの問題は解決しないということである。たとえば、「研究会報告」では、「人選にあたって、労働組合員に不利益な取扱いをすれば労働組合法の不当労働行為になり、労働委員会の救済の対象となる」(P30)と述べている。しかし、ほとんどの場合、転籍対象者を最終的に選定するのは譲受会社である。そして、譲受会社は、転籍以前は、使用者でないとして、不当な差別を行なっても、不当労働行為には当たらないとする見方がある。したがって、この問題を解決するためには、労働組合、譲渡会社、譲受会社の信頼関係の確立とそのうえに立った誠実な協議しかなく、そのための法的な枠組が求められているのである。少なくとも、営業譲渡契約を交わし、労働契約の承継を約束した時点から、団体交渉応諾義務を含む労働組合法上の使用者責任を譲受会社に課す必要がある。
(8)営業譲渡を理由にした解雇
営業譲渡でとくに問題となるのは、倒産・経営危機を背景に、営業の全部または重要な部門を他社に譲渡し、譲渡会社そのものは清算に入るケースである。このような場合は、転籍を拒否された労働者は解雇となり、営業を譲渡してした後の会社は事実上、生きた屍同然であるから、争うこともできない。
そもそも営業譲渡とは、営業の全部または重要な一部の譲渡であり、営業とは「一定の営業目的のために組織され、有機的一体として機能する財産」である(最高裁判決昭40.9.22)つまり、営業譲渡とは、不動産や機械などのたんなる有体物の譲渡とは区別される概念であり、そこでは、その営業活動を支える労働者が不可欠な構成要素となる。したがって、このようなケースの場合は、本人が希望する場合は、労働契約は承継されなければならないのであって、譲り受け会社が、労働者を受け入れないというのは、事実上の整理解雇だから、「整理解雇」に関する判例にもとづいた手続が必要でなければならない。また、労働条件等についても、労働契約の一部として承継されるべきである。
会社が、今回の契約は「資産譲渡であり、営業譲渡でない」などと理由をつけ、「だから、転籍でない」と開き直ることもある。そもそも、「営業譲渡」「資産譲渡」など名称に係らず、譲渡先企業と労働者の扱いについて協議している場合は、「労働契約上の立場の譲渡」とみなすべきである。
(9)年齢による差別
分社化にともなう転籍に際し、50歳未満は在籍出向。50歳以上は転籍というように、年齢により差別し、問題になることが多い。しかし、50歳以上でも転籍を拒否し、在籍出向を望む労働者は圧倒的に多い。また、「なぜ47歳でなく、50歳なのか」という質問に答えられる経営者はいない。つまり、年齢による区別は客観的根拠はないである。
年齢による雇用差別の是正は近年社会的にも問題とされるようになり、昨年の「雇用対策法」改正でも、採用時の年齢差別について禁止された。分社化など企業組織の再編でも、年齢による転籍の差別を行なわないことを徹底すべきである。
(10)民事再生法下での営業譲渡
民事再生法が施行され、再生計画決定前の営業譲渡が可能となったこともあり、民事再生法下での営業譲渡が激増している。最初から、営業譲渡を前提に民事再生手続を申し立てる企業も少なくない。
民事再生手続下での営業譲渡は、事実上の倒産というもとであるだけに、労働組合・労働者にとっては、もっとも厳しい選択を迫られる。たえず、「この営業譲渡を成功させなければ破産だ」という脅しのもと、極端な労働条件ダウンの転籍条件を押し付けられる。また、転籍対象からはずれた労働者は多くの場合退職を余儀無くされる。
民事再生法では、一応、「営業譲渡」などについては、労働組合の意見を聞かなければならないことになっている。しかし、東京地裁などでのこの条文の運用は、営業譲渡の賛否を問うだけで、転籍条件などについて、労働者・労働組合の意見を聞き、それを反映するというようにはなっていない。じゅうぶんな情報もないまま、イエスかノーだけを問われるのである。これでは、せっかくの条文も死文化していると言わざるを得ない。
(11)会社分割の問題点
会社分割法が施行されて1年余りが経過した。会社分割法は、合併と同じ包括承継とされ、労働契約承継法では、分割部門で働く労働者は、労働契約の承継に本人同意は不要とされた。
この間、会社分割を利用した企業再編は急激に広がっており、それにともない、労働契約承継法で定められている労働者への理解と納得を得る努力がじゅうぶんになされず、事実上、強引に会社分割が強行されるなど、法律が成立する前からわたしたちが懸念していた矛盾が顕在化しつつある。法の見直しを行なうべきである。
4、以上の問題点を踏まえ、立法措置を含めた次のような点での措置を講ずるべきである。
(1)会社は、営業譲渡の検討に入った段階で、法令等で定められた事項については、速やかに労働組合に情報開示することを義務づけるべきである。少なくとも、「営業譲渡基本契約」前を含め、労働組合への情報開示はインサイダー取引規制に抵触しないこと、営業譲渡当事者間で取り交わされる「非公開」条項については、労働組合への情報開示を含めないことを明確にすべきである。
(2)少なくとも、転籍を実施する6ヶ月前までに会社は労働組合に対し、転籍についての提案を行なうとともに、譲受会社の企業情報や勤務先、労働条件等、法令で定められた事項について労働組合・労働者に情報開示するとともに、労働組合との誠実に協議することを義務付けるべきである。
(3)経営に強い影響力をもち、雇用・労働条件の決定権をもつ持株会社や親会社に対し、労働組合法上の使用者責任を負わせ、営業譲渡など企業組織再編に係る経営情報の開示と誠実な労使協議を義務付けるべきである。
(4)「営業譲渡基本契約書」等、営業譲渡を行う企業間で当該部門で働く労働者の労働契約について取り決めを行なった時点から、譲受会社は、転籍者の使用者として、労働組合法上の使用者責任を負わせ、転籍者の選定基準、譲受会社での労働者の雇用・労働条件に係る情報について誠実に情報をすみやかに開示し、誠実な労使協議を義務付けるべきである。
(5)組合員との労働契約上の立場を第三者に譲渡する場合は、組合員が所属する労働者との間で締結されている労働協約も承継されるべきである。
(6)転籍が強要されないよう、転籍・希望退職など労働契約に係る問題についての面接を強要してはならず、また、労働組合や代理人(弁護士)を通じての協議を会社は拒否してはならないことを明確にすべきである。
(7)仕事取り上げ、隔離など、いやがらせやみせしめにあたる行為を禁止すべきである。
(8)転籍を拒否した場合の配置転換は、労働者の同意を必要とすべきである。
(9)「資産譲渡」など、譲渡契約上の名称に係らず、それに係る労働者の労働契約の承継については、営業譲渡と同様の扱いとすべきである。
(10)転籍者の選定基準について禁止事項を定め、労働組合法上の不当労働行為にあたるような基準や国籍、信条、社会的身分、性別、年齢を選定基準に設けることを禁止すべきである。また、育児・介護休業中であることを理由に本人が希望しているにもかかわらず、譲受を拒否することを禁止すべきである。
(11)既存の会社に営業の全部を譲渡する場合は、譲り受け会社は、すべての労働者を承継すべきであり、すべての労働者を承継せず、そのために、労働者を解雇する場合は、整理解雇として、整理解雇の判例上の要件にもとづく手続を行わなければならないことを明確にすべきである。
(12)民事再生法および次期国会に改正法案が上程予定の会社更生法について、営業譲渡にかかわる労働組合からの意見聴取だけでなく、労働組合との事前協議と合意を前提にすべきである。
(13)会社分割法・労働契約承継法施行後の労働者の権利保護の実態について、全国調査や全労連・JMIUを含めた幅広い労働組合からのヒアリングを行い、法の見直しを行なうべきである。
(14)労働契約に係る労使協議については、各労働者の個別権利に係るため、過半数組合や従業員代表だけでなく、労働組合法上のすべての労働組合に同等の権利を与えるべきである。
5、以上、営業譲渡における労働者の権利に係り、現場で起きている具体的な問題点を指摘し、それにもとづく要請事項を明らかにした。
これらは、企業が講じなければならない措置として周知徹底などが必要であるが、残念ながら、多くの企業は、法的規制のない「指針」は、積極的に守ろうとしないのが実情で、結局、労働者が泣き寝入りさせられるか、長い年月と費用を費やし、裁判や労働委員会で争わなければならないのが実情である。
真に労働者の権利をまもるためには、企業名の公表などの措置をとるとともに、罰則規程を含めた法的規制が必要であることを最後に強調しておく。
以 上
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産業空洞化に立ち向かうための第1次緊急提言発表にあたって
2003年3月28日 JMIU・金属労働研究所合同プロジェクト
1)いま金属機械、自動車、電機、精密関係の製造業では、海外への生産移転が急速に進行しており、事業所閉鎖や子会社などへの転籍、広域移転などの形をとった「リストラ人減らし」が激増している。金属製造業に働く労働者のくらしと雇用には、産業空洞化の影響が、きわめて大きくあらわれている。
全日本金属情報機器労働組合(JMIU)は、一般機械、金属製品、自動車、電機、精密、コンピューター関連など、ものづくり金属製造業やソフトウェアの労働者で組織する労働組合である。JMIUは、これまでも海外への生産移転によって引き起こされるくらしと雇用の破壊にたいしてたたかい、労働者のくらしと雇用をまもってきた。
しかしこれは、結果に対して歯止めをかけるたたかいである。労働者のくらしと雇用、ものづくり中小企業の経営基盤をまもるためには、それでは足りないことは明らかである。労働者のくらしと雇用、中小企業を破壊する事態を引き起こす原因に立ち向かい、それに「歯止め」をかける必要があるという思いが、労働者のなかに大きく広がっている。立場の違いはあっても、日本の金属製造業のあり方や将来像について、労働者のみならず、業者や中小企業経営者、地方自治体、研究者も真剣に考えている。
こういうなかで、「労働者のくらしと雇用をまもる」という問題意識を中心に、JMIUおよび金属労働研究所に協力する研究者が共同して、産業空洞化に立ち向かう政策提起を目標にした作業を、昨年からすすめてきた。
事態の進行の深刻さから、第1次緊急提言をこの時点で発表することにした。可能なことから運動を起こすために、この緊急提言を役立てたいと思う。同時に、産業空洞化に立ち向かう労働者・労働組合はもとより、中小企業家・業者や心ある産業人とその団体、地方自治体、住民団体、有識者など、広範な方々のご意見やご批判をいただきたいと考えている。そのうえで、7月段階には「政策」としてまとまったものを提起できるようにしたいと考えるものである。
産業空洞化に立ち向かう政策の全体構想については、@産業空洞化の現状と特徴、A政府や業界、労働組合の産業空洞化政策や対策についての検討、B産業空洞化発生の原因とメカニズム、C産業空洞化に歯止めをかける政策的提言、Dアジア経済のなかでの日本経済、日本経済の今後のあり方、Eこの課題にあたっての労働組合の役割と活動などが必要であると考えている。
2)プロジェクトメンバーは、以下のとおりである。
徳重昌志(中央大学教授―責任者)、大木一訓(日本福祉大学教授)、松丸和夫(中央大学教授)、芹沢寿良(高知県立短期大学名誉教授・労働総研)、小谷紘司(政治経済研究所)、古屋孝夫(金属労研)、西村直樹(金属労研)、生熊茂実(JMIU中央執行委員長)、三木陵一(JMIU書記長)、小林宏康(JMIU顧問)
以上
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産業空洞化に立ち向かうための第1次緊急提言
2003年3月25日 JMIU・金属労働研究所合同プロジェクト
1、崖っぷちの産業空洞化−第1次緊急提言の目的
1)労働者のくらしと雇用、日本経済を破綻に導く産業空洞化
(1)「販売不振、赤字累積、売掛金回収困難」を原因にした倒産を「不況型倒産」というが、東京商工リサーチによると、2002年の「不況型倒産」は過去最多の14,055件(前年比2.8%増)である。「不況型倒産」というが、不況だけが原因ではなく、仕事の減少や製品価格・工賃の低下が大きな影響をあたえている。
2003年1月における完全失業率は5.5%、失業者は357万人である。2002年をとおした年間平均失業率は5.4%となっており、前年の5.0%からいっきょに0.4ポイント悪化し、過去最悪の水準である。労働者の賃金水準も下がり続け、厚生労働省発表の毎月勤労統計によると2002年分の平均月間給与総額は前年比2.4%減の343,480円である。これは一昨年にひき続く減少となっている。
青年・学生の就職難、失業も深刻である。2002年度新卒高校生の就職率は3月末でも90%以下であり、多くの若者の社会への門出が「失業」という状態では、日本社会の将来に悪影響をもたらしかねない。
また海外への生産移転にともなう地方での工場閉鎖の連続は、多くの労働者の雇用の場を奪い、失業の増大、税収の大幅減など、地域経済の崩壊や地域社会の荒廃につながりかねない深刻な状態を生みだしている。
(2)この事態の原因は大きくいって二つある。
第1は、1997年以降、連続した消費税などの増税、社会保障の切り捨てなど労働者・国民にたいする収奪強化による消費不況(政策不況)、および中小企業切り捨て政策が中小企業経営を悪化させ、倒産・廃業、人減らし、所得ダウンをもたらしているからである。
第2は、大企業による自らの利益最優先・身勝手な企業行動である。それは、中小・下請企業への犠牲転嫁、中国をはじめとするアジアへの生産移転による産業空洞化が、労働者のくらしと雇用を悪化させ、中小企業の経営を破綻させている大きな要因である。海外への生産移転にともなう逆輸入の増大は、日本経済が直面するデフレの原因ともなっている。
2)産業空洞化は新たな段階に達している
(1)「産業空洞化」とは何か、私たちが「産業空洞化」として問題にするのは、<国民生活にとって不可欠な産業と就業の場が解体・崩壊してしまうこと>であり、それにともない、@失業・雇用不安の深刻化、A中小企業の倒産・廃業の激増、B地域経済の崩壊、C自主的技術基盤の破壊などが起こり、<国民経済の成立そのものを危機におとしいれる事態>という立場からである。
(2)海外への生産移転は、円高によって失った「価格競争力」を回復するという性格だけではなくなっている。1985年のプラザ合意による急激な円高を契機にすすんだ産業空洞化は、輸出産業の競争優位性をもつために、輸出市場国などへの生産移転をおこなってきた。
しかし1997年ごろを境にして、経済の「グローバル化」という名のもとに、「最適地生産」、「最適地調達」をキーワードとする国際的産業再編のなかで、輸出製品を安くつくるという目的だけでなく、中国・アジアを有力な市場として位置づけた構造的な産業空洞化に段階が変わってきたといえる。
この時期から、これまで中国では生産が不可能といわれてきた分野にまで、生産移転は広がるようになった。そして、ハイテク分野や技術開発部門などをふくめて、中国を中心として急激な技術移転がすすんだ。そういう意味で、円高によって急激にすすんだ産業空洞化の時期と区別される「産業空洞化の第2段階」といってもいい状況にある。
(3)これは日本経済の状況と密接な関係にある。1997年は、橋本内閣による「構造改革」による規制緩和がおこなわれ、同時に、消費税引き上げと医療・年金改悪がおこなわれ、バブル経済崩壊後、一定の立ち直りをみせていた日本経済を再び深刻な不況に突き落とした年である。
この不況による国内需要の後退が、海外市場とそれに最適な生産・調達体制をつくる動きを加速させたことが、急速な産業空洞化の背景になっているといえよう。
(4)カラーテレビの生産においては、日本における年間需要はおおよそ1,000万台といわれるが、国内生産は178万台に過ぎない。その一方で、海外日系企業でのカラーテレビ生産は年間5,600万台にも達しており、その海外日系企業製品を中心に800万台以上が日本に逆輸入されているという現状にある。
経済産業省「2000年海外事業活動基本調査」によると、2000年度の製造業の海外生産比率は14.5%で、1990年度の6.4%の2倍以上に上昇している。とりわけ、自動車33.2%、電気機械25.2%などが高い水準にあり、日本の中核産業の産業空洞化が加速していることがはっきりわかる。海外進出企業に限ってみた場合、海外生産比率はすでに34.1%に達しており、産業空洞化が多国籍企業の積極的な生産拠点の海外移転によって進行しているのは明白な事実である。
経済産業省産業構造審議会新成長政策部会の最終報告「イノベーションと需要の好循環の形成に向けて」(2001年12月)は、産業空洞化の歯止めがかからなければ、2006年から2010年までの年平均成長率は0.5%にとどまり、2010年までに製造業でさらに250万人の雇用喪失が発生すると試算している。
この流れに歯止めがかからなければ、日本における深刻な地域経済とものづくり産業基盤の崩壊がおこることは明らかである。
3)産業空洞化への歯止めは待ったなしの課題
(1)私たちJMIUのある職場でも、事態は進行している。1995年から96年にかけて日本NCR大磯工場でパソコン生産中止、海外への生産移転、それにともなう希望退職や子会社への転籍が労働者に強要された。私たちは、労働者の雇用をまもるために、職場の要求を土台にして団結を強め、地域から全国にたたかいを広げ、労働者の雇用と権利をまもってきた。しかしNCRの経営者はこういうのである、「ものづくりはリスクである」と。アメリカ型の投機主義的経営が、産業空洞化を促進していることも痛感する。
親会社の海外展開によって中国への工場進出をおこなったある企業では、結果としてこの10年間で国内工場労働者数は希望退職もふくめて150人から80人に減少、中国工場は10人から100人に増大している。2003年にはいっても、オリンパスのデジタルカメラのアルミダイカストボディーなどを製造している東京金属において、中国への生産移転のため企業閉鎖が提案されている状況にある。
(2)90年代初頭、JMIUは徳島・池田船井電機において三洋電機の海外生産移転とたたかい、2年間生産を継続させた。これは当時におけるすばらしい成果であったが、長続きさせることはできなかった。こんな経験と労働者にたいするきびしい攻撃の現状をふまえて、結果にたいしてたたかうだけでなく、産業空洞化の原因にも立ち向かい、産業空洞化に歯止めをかけるたたかいが緊急課題となっていると考える。
(3)現在、労働者・国民のくらしと雇用を破壊している「消費不況」にたいしては、「国民生活改善こそ不況克服の道」という世論が広がり、医療改悪凍結、外形標準課税・消費税増税反対など、政策提起や運動がすすんでいる。しかし産業空洞化の課題では、いくつかの地域からのとりくみがすすんでいるが、まだ世論を動かす大きな運動にはいたっていない。金属製造業を中心とする全国組織の労働組合であるJMIUが、いま声を上げる必要がある。
(4)すでに電機大企業の工場閉鎖が、東北、信越、四国などで、次々に起こっており、地域経済に破壊的な悪影響を与えている。産業空洞化は、労働者・労働組合だけの課題ではなく、地域経済にかかわる商工業者、住民、地方自治体の問題にもなっている。すでにいくつかの地方自治体では、大企業の工場閉鎖にたいして工場存続、雇用確保など、その社会的責任を問う行動を起こし、一定の成果をあげている。産業空洞化にたいするたたかいは、地方自治体をふくむ国民的な共同の課題としてとりくむ必要があること、それが大きな力になることを私たちは実感し、そのために力を注ぎたいと考えている。
2、産業空洞化を利用した労働者への攻撃の激化
―日本の労働者の労働条件向上は不可能か、ものづくり企業は成り立たないか
1)いま、このような産業空洞化を利用した資本の攻撃が強まっている。2002年12月に発表された日本経団連の「経営労働政策委員会報告」でも、「経済のグローバル化にともない、激烈な産業・企業間の国際的競争が繰り広げられ…日本経済の『高コスト構造』が…国際競争力の低下への懸念となっている」と「高コスト構造」に攻撃を集中している。現場では、「これ以上の労働条件向上は、海外生産との競争ができない」として、賃金抑制から引き下げが当然という攻撃が強まっている。また、派遣労働者をはじめとしてコストの安い、「使い捨て」可能な不安定雇用労働力の導入がすすめられている。具体的には、大企業におけるリストラ人減らしや賃下げ強行としてあらわれている。また、それを法的に保障し推進するものとして、連続した労働基準法や労働者派遣法の改悪がすすめられようとしているのである。
2)現在とりくまれている2003年春闘でも、経営者側の論理は、「国際競争力に勝てなければ、企業は存立できない」、「賃上げは不可能」というものであり、その対応は「定期昇給廃止、切り下げ」という「賃下げ」路線にいっせいに踏み込んできている。
日本経済、ものづくり企業では、もう賃上げや労働条件の向上はできないのだろうか、日本のものづくり企業の経営は成り立たないのだろうか。あらためて、これらの攻撃に立ち向かう理論、政策が求められている。
3)「経済のグローバル化」において、産業空洞化は必然なのだろうか。果たして、日本の労働者の賃金が高いから「コスト高」で国際競争力を失うのだろうか。日本経済にとって中国の経済発展は「脅威」なのだろうか。その他にも、産業空洞化をめぐって解決しなければならない論点は、いくつもあるだろう。そういう問題に立ち向かい、労働者・国民本位の日本経済の再生への道を探ろうというのが、この研究プロジェクトの中心課題である。
「日本の労働者の賃金は世界一高い」という「理論」は、為替レートによる実体のない「高賃金」や日本の労働者の生活実態からして暴論であることは明らかだが、7月に予定する「ものづくり中小企業の経営基盤をどう発展させるか」という政策提起のなかで、論点は明らかにしていく。
3、なぜ日本で異常な産業空洞化が進行しているか
1)円高による「生産コストの上昇」
90年代後半、1ドル80円台という異常円高は、産業空洞化を加速した。異常円高は、日本資本主義の強い対米従属政策、および主として突出した国際競争力をもつ自動車や電機などの輸出産業部門を中心とした、日本の恒常的な貿易黒字など日本経済の歪みによって引き起こされている。円高は国内価格が変動しなくても、ドル建ての輸出価格が上昇し、輸出部門の国際競争力を低下させる。同時に円高は、輸入製品の価格を引き下げるので、輸出製品の原材料価格を低下させ生産コストを低下させる。賃金は為替相場に連動しないため、直接的にドル建て比較では上昇する。
円高による輸出価格上昇、とりわけ労働コストの上昇を回避するために、賃金の安い中国やアジア諸国に生産を移転するという企業行動をとるのである。
2)グローバル化した世界市場に積極的に対応する多国籍企業の国際的展開
経済のグローバル化のなかで、外国資本に開放された市場でのシェアの拡大と市場支配権を確立するために、多国籍企業は、輸出に代えて現地生産に重点を移してきた。グローバル化は、多国籍企業が国境を越えて自由な行動をとるための「自由化・規制緩和」を求めて、それを政治に押しつける。
市場競争での優位性確保には、市場に密着した生産体制の確立が有効である。消費者の求める製品は何か、それをどう開発するのか、どう市場に供給するのか、これらの市場戦略をすすめるには、研究開発部門をかかえた大規模な生産体制を現地につくることが重視される。
多国籍企業は、基本的には本社を母国に置くが、母国の国民経済との関係はきわめて希薄になり、世界市場に最適生産体制をつくることになる。自らの利益のためには、「国を捨てる」のである。
3)国内経済の不況と海外展開
日本の急激な産業空洞化は、ヨーロッパなどに見られない異常さがある。これもまた、日本の産業空洞化の要因としてみる必要がある。とりわけ1997年ごろからの空洞化の「新たな段階」は、橋本内閣の政策不況による国内需要の低下が、大企業をして、いっそう海外市場を求めて、海外への生産移転や輸出に集中する企業行動をもたらしたのである。
「橋本構造改革」の名による労働者・国民への増税、社会保障切り捨てや失業増大・所得減少が、国内の消費購買力をいっそう低下させ、産業空洞化を加速させたのだが、それは不況のもとでも、大企業が異常なほどの高収益体制追求をおこなったからである。現在の「小泉構造改革」のもとでも、労働者・国民の購買力を奪っている。現在の海外への生産移転の加速も、同じ要因が働いているといっていい。
4)日本における多国籍大企業規制の弱さ
ヨーロッパに見られない異常さの第2は、多国籍企業への規制がきわめて弱いことである。「規制がない」とさえいっていい状況にある。ILOやEU(ヨーロッパ共同体)の基準では、海外生産や工場閉鎖などの場合は労働組合や従業員代表との事前協議が義務づけられ、違反すれば裁判でも負ける。また海外への生産移転をする場合でも国内雇用は保障する、工場閉鎖の場合は代替雇用を保障するなどの規制をうけることが多い。
日本では、法的・社会的な規制がまったくなく、大企業が自由に海外への生産移転や工場閉鎖ができる。日本の大企業の労働組合は、それを容認・支持してきたのが実態である。また私たち自身の反省だが、産業空洞化の課題にたいして、ナショナルセンターをふくむ日本の労働組合運動が十分とりくめてこなかったことが、空洞化を加速したといえよう。
4、産業空洞化は克服できる−私たちの視点
1) 経済のグローバル化=産業空洞化ではない
(1)「経済のグローバル化」という名で、国際的な金融取引に走って膨大な損失をこうむった日本の金融機関、バブル経済に踊ってものづくりより株、土地、ゴルフ場、リゾート開発投資にのめりこんだ日本の多くの経営者。その結果が、リストラ・失業、医療・年金など社会保障の切り捨て、「不良債権処理」による中小企業の淘汰、ゼロ金利などの異常事態につながっている。この被害を一番うけているのは、労働者・国民である。
いまでもアメリカ型の「株主資本主義」に流され、「株主」への利益配当こそ最大の企業目的として、ものづくり企業としての着実な利益率を度外視し、人減らしリストラを中心に、企業の売買、分割、分社化、営業譲渡、アウトソーシングなどで、目先の利益追求に走っている企業が多い。
この事態を利用して一番利益をあげているのは、アメリカ資本はじめ外資である。リップルウッドが日本長期信用銀行をわずか10億円で買い取ったのは、その典型であるが、外資は日本のものづくりを支えてきた中堅・中小企業にまで、買収や技術提携の手を伸ばしている。それは、不況・株価低迷、産業空洞化のなかで日本企業の資産価値が低下し、外資にとって絶好の「買い場」になっているからである。外資の方が、日本のものづくり、金属製造業に魅力を見つけている。実に皮肉な現象だが、私たちはそこからも教訓を学びとらなくてはならない。
(2)経済のグローバル化=産業空洞化ではないと考える。産業空洞化は、「国も捨てる」という国民に背を向けた多国籍大企業の無責任な企業行動、それを推進する「構造改革」という名の規制緩和路線により、もたらされた「人災」である。したがって、適切な経済政策と企業行動にたいする規制・誘導によって、産業空洞化は克服できるのである。
国民の生活、雇用(仕事)と福祉こそが、経済政策の目的でなければならない。そのためには、国民経済の安定的発展という視点が不可欠であり、国民経済を衰退させる企業行動は規制されなければならない。
また、地球環境の破壊が深刻化するなかで、「持続可能な成長」とそれと深い関係をもつ「企業の社会的責任」は、国際世論の流れとなっている。この視点から、日本資本主義のあり方も検討されるべきだろう。
2)ものづくり、とりわけ金属製造業を中心産業として位置づける必要がある
日本経済をつりあいのとれた発展をさせるには、国民経済という視点が必要である。その場合、原材料の乏しい日本にあって、それを加工・製品化して新たな価値を生み出す金属製造業が日本経済を支えているという重要性は、誰も否定することができない。日本の金属製造業の裾野はきわめて広く、それに従事する労働者・国民は1,000万人近くになるだろう。
金属製造業は、「新たな富を生み出す」、「機械や素材など、すべての産業の土台をつくる」、「ものづくり文化をつくる」、「大きな雇用の場をもっている」など、日本経済を土台から支えていることは疑いがない。このようなものづくり・金属製造業をしっかりまもり育てる経済政策こそ、日本の経済政策の基本とする必要がある。産業空洞化を放置してはならないのである。
金融やサービスによって、日本経済に新たな価値を生み出すことはできないし、日本経済を持続的に発展させることはできない。アメリカ経済の一時の「繁栄」は、軍事力と世界の基軸通貨であるドルによる世界支配ぬきには成り立たないのであり、日本経済のモデルとはなりえない。アメリカのドルは直接国際収支決済の手段となるが、日本通貨の円はその決済手段とならず、決済はドルでおこなわざるをえない。そのためには、日本における一定の外貨準備が必要であり、富をつくりだす製造業が衰退しては、長期のスパンで見れば、日本経済は成り立たないのである。
3)国際競争力をめぐるいくつかの問題
昨年11月29日付け日本経済新聞の「主要企業経営者へのアンケート調査」によると、「日本の大企業経営者の8割近くが、技術開発力を中心に国際競争力を高める考えであることが明らかになった。中国の台頭などに対抗、大競争を生き抜くにあたり、技術開発力や知的資産という企業価値の基盤を充実させて難局を突破する決意が浮かび上がってくる」としている。
アンケートの結果や「産業力」(日本経済新聞社)などによれば、国際競争力は、@技術開発力、A信用(ブランド)力、B価格・コスト力という順番になる。大企業製品ほど、人件費コストの占める割合は低いのである。しかし大企業経営者をはじめとして、「労働コスト削減こそが国際競争に勝つには必要だ」として、人減らし、賃下げ攻撃を強めている。だが自ら語っている、技術開発、信用などの意味について、十分に検討する必要があるだろう。
5、「可能なことから、急いですすめよう」−当面の緊急提言
1)魅力ある金属製造業をつくり、人材を確保する
(1)いま中国における金属製造業で働く労働者は、日本と目の輝きが違うと多くの研究者がいう。また、「優秀大学卒業の技術者などが、ほとんど製造業に就職する」という。新たな技能や技術、知識の吸収など、日本の高度成長時代を思い出させるようである。
それに比べて、日本の金属製造業は「3K(きつい、汚い、危険)職場」、それに「給料が安い」といわれて青年から敬遠され、成績優秀な学生は、官公庁や金融関係などに多く職を求めている。
(2)これは日本の金属製造業が、労働条件や仕事の環境の悪さなど、魅力に欠けているからである。とくに、中小企業の置かれたきびしい経営環境は、経営者ですら「子どもに後を継がせたくない」という状態が広がっている。しかし、そういうなかでも、金属製造業のものづくりに魅力を感じた青年が、職場に次々に入ってくるという事実もある。それは、「ものづくりは、自分の知恵や工夫で、大きく変化発展する」ということを、さまざまな機会でつかんだ若者たちである。どんなにきびしくても、金属製造業には発展があり、この職場は金属労働者自身がまもるという誇りをもって働き続けることが大切である。
すでに述べた金属製造業の重要さからしても、魅力ある金属製造業・ものづくり企業の発展を国の経済政策の基本とするとともに、国民的な合意にまで高める必要があり、そして人材が確保できるようにしなければならない。
(3)ものづくり技術・技能の伝承では、大企業における「成果主義」によって「後輩に教えない」という風潮の広がり、また不安定雇用労働者の導入による技能蓄積の困難さなどによって「技能養成システム」が壊されており、歯止めが必要になっている。また中小企業の技術的衰退が深刻になっており、中小企業の後継者や技術・技能者養成の公的・協同の職業訓練システムが必要になっている。これは、青年の就業困難の状況からも、有給で受講が可能になるようにすべきものと考える。
(4)金属製造業は、今後も発展する
金属製造業は、夢のある産業である。科学技術の進歩が、正しく労働者・国民のために役立てられれば、それは地球世界の生活、文化の向上と平和に結びつくものである。このような意味をもつ金属製造業としての振興策が求められる。
2)大企業の社会的責任を果たさせる
(1)日本の産業空洞化が、ヨーロッパ諸国に見られない異常な激しさをもっているのは、大企業の横暴にたいする規制が弱いことにあることをすでに指摘した。空洞化に歯止めをかけるには、大企業に社会的責任を果たさせる民主的規制が、どうしても必要である。
(2)国連やILO、EU(ヨーロッパ共同体)などの企業行動に関する規制を日本でもおこなうべきである。そうすれば、大企業のグローバルな事業展開があっても、空洞化を生じさせる恐れを少なくすることができる。
(3)具体的には、生産の海外移転については、労働組合、地域の関係団体、地方自治体にたいして、計画段階から情報を開示させ、事前協議を義務づけることを基本とする。とくに、工場誘致などで地方自治体と地域住民の多大な負担や優遇をうけた大企業が、一方的に撤退するなら、撤退による被害にたいして一定の補償をさせること、代替雇用の保障、地元企業との取引の継続などを、自治体での条例化もふくめてとりくむべきである。
3)中小企業の自立化、異業種交流、共同化の推進
(1)日本では、中小企業が大企業の系列下請支配のもとで、際限のない単価・製品価格切り下げにさらされ経営困難におちいっているが、これは親企業を離れて存立できない立場に置かれてきたことに原因がある。親企業の生産海外移転は、直接死活の問題になる。
こういう事態にたいしては、下請二法を厳格に適用する必要がある。また、下請振興基準の少なくとも以下の項目は、下請代金法改正のなかで強制力をもたせるべきである。
@「単価の決定方法の改善」における「取引単価は…下請中小企業の適正な利益の確保及び労働時間短縮等労働条件の改善が可能となるよう、下請事業者及び親事業者が協議して決定する」
A「納期、納入頻度の適正化」における「納期、納入頻度は、下請事業者の受注状況、設備及び技術の能力等を勘案して、下請事業者にとって無理がなく、かつ、下請中小企業の労働時間の短縮が可能となるよう、下請事業者及び親事業者が協議して決定する」
B「取引停止の予告」の「親事業者は、継続的な取引関係を有する下請事業者との取引を停止し、又は、大幅に取引を減少しようとする場合には、下請事業者の経営に著しい影響を与えないよう配慮し、相当の猶予期間をもって予告する」
(2)産業空洞化に抗するには、中小企業が自立していける事業分野と市場の開拓が重要であるが、中小企業が単独でおこなうには無理がともなう。中小企業のネットワークをつくり、異業種交流や共同化で新製品、新技術の開発と市場の確保をはかるとりくみをIT技術も活用してすすめることが重要である。なかでも異業種交流は、単独では不可能な発想や技術の活用など、すでに重要な成果が生まれている。
(3)企業同士の利害関係が生まれやすい中小企業の異業種交流や共同化については、地方自治体などの公的機関がコーディネートするなど、積極的支援をおこなうことが、このとりくみが前向きにすすむ要因となるだろう。
また、中小企業単独の技術開発には大きな限界がともなうことは明らかで、中小企業と大学相互の技術や設備の提供、開発委託などがおこなえるよう自治体の援助が必要である。中小企業のマネージメントについての援助も重要である。これを援助するものとして、地方・地域の大学や研究機関との提携をおこなう「産学連携」や地方自治体による「技術支援センター」、「マネージメント(経営)支援センター」などが重要である。
(4)労働組合のとりくみとして最低賃金制や産業別・業種別の統一基準にもとづく労働協約締結などで、最低規制の強化をはかり、工賃設定の社会的基準をつくりあげるよう努力する。また中小企業団体の地域・業種での組織化をはかり、過当競争をなくし、大企業との対等な交渉力がもてる方向をめざすことが必要である。
4)地域経済活性化の推進
(1)中小企業の自立的な発展のためには、よって立つ地域経済の活性化が不可欠である。地域経済と地域住民の生活と雇用の担い手は中小企業であり、中小企業の衰退は地域経済の破壊をもたらす。両者は不可分の関係にある。
(2)地方自治体や政党、地域・産別の労働組合、中小業者組織やNPOをふくむ市民団体など広範な共同の力で、「地産地消」や「地域ブランド」など、中小企業の経営の基盤となるような地域需要の創出、地域経済を活性化させる金融機関の役割などを明らかにする「地域経済振興計画」を具体化することが必要である。こういうとりくみが、空洞化に抗して地域経済を再生させる。
5)ものづくり中小企業への政府・自治体の支援の強化、
(1)産業空洞化を克服していくには、政府・自治体の中小企業への支援強化が重要になっているが、いま政府の中小企業政策は、ベンチャー支援に偏り、ものづくり基盤を支える中小企業を淘汰の対象にしている。
(2)中小企業の自立的発展こそが、日本経済を健全に発展させていく。これを支援する財政的金融的な援助が必要であることは当然だが、人材育成などにもとりくむことが必要である。そのために、中小企業予算の抜本的増額を政府・自治体に求めるものである。
同時に人材確保のうえでも、「解雇規制・労働者保護法」など、大企業の民主的規制にふみこむことが重要である。アメリカ型の「株主資本主義」では日本経済の未来は描けない。世界の流れも、ヨーロッパをはじめ、新たな経済的システムをつくりはじめている。日本においても、ものづくり中小企業の重要性を明確にした「中小企業憲章」を制定し、中小企業支援強化の方向に、政府の経済政策を転換し、国民経済の再構築をめざす必要がある。
6)国際的な共生関係の追求と労働者の連帯
産業空洞化をもたらした日本の大企業の海外進出は、現地の低賃金利用と環境軽視による低コストを求めた利潤第一主義であり、利益確保の条件が落ちれば、さらに有利な地域に移動し、現地社会に混乱を与えてきた。利潤第一主義でなく、相手国との平等互恵の共生関係を追求する必要がある。
現地労働者の団結と権利を妨害させてはならない。国際労働基準であるILO条約・勧告をまもり、国際的に連帯して格差縮小に努力することが課題である。このとりくみが前進するなら、高利潤めざして空洞化を起こして生産を海外移転する利点は、減少することになる。
国内においても、労働者を保護する法律や労働協約で、企業の違法・横暴な解雇やただ働きを規制し、「働くルール」を確立していくことが、産業空洞化の展開を阻む力になっていくだろう。
最後に
この「第1次緊急提言」は、今後の調査・研究に待たねばならないことを残したままでの発表であった。それは、その緊急性の故でもある。産業空洞化のもとで、苦労されている労働者・国民は数多い。あらためて、お願いしたい。ぜひ、この「提言」について、労働者・労働組合はもとより、業者・中小企業家、業者や心ある産業人の方々、地方自治体、産業行政に携わる方々、研究者・有識者など、広範な方々のご意見やご批判をいただきたい。そして、日本の労働者・国民にとって望まれる金属製造業の将来のあり方について、広く合意をつくるきっかけにしたいと考えるものである。
以上
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・「03春闘統一要求書」「イラク・労働法制職場決議」
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